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東京高等裁判所 平成2年(ネ)4360号 判決 1992年1月29日

控訴人

株式会社第一勧銀ハウジング・センター

右代表者代表取締役

後藤寛

右訴訟代理人弁護士

尾﨑昭夫

額田洋一

川上泰三

新保義隆

被控訴人

行方丈夫

向後禎彦

右両名訴訟代理人弁護士

森本紘章

右訴訟復代理人弁護士

樫八重真

被控訴人両名補助参加人

小郷建設株式会社

右代表者代表取締役

小郷利夫

被控訴人両名補助参加人

株式会社東京企画

右代表者代表取締役

小郷栄子

右両名訴訟代理人弁護士

小山晴樹

渡辺実

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者双方の申立て

一控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、控訴人に対し、各自金二三七四万二三二六円及び内金二三五〇万円に対する昭和五九年七月二三日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも、被控訴人らの負担とし、参加によって生じた費用は、第一、第二審とも補助参加人らの負担とする。

4  仮執行の宣言。

二被控訴人ら

本件控訴を棄却する。

第二事案の概要

一争いのない事実と証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実

本件は、控訴人が、被控訴人行方に対しては貸金として、被控訴人向後に対してはその連帯保証債務の履行として、元金二三五〇万円、利息金二四万二三二六円及び右元金に対する昭和五九年七月二三日から支払済みまで年一四パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1  控訴人は、保証業務、住宅ローン融資などを業とする会社であるが、そのうちの住宅ローン融資は、全て訴外株式会社第一勧業銀行及び第一勧業信用組合などの関連の企業からの紹介により行っている(<書証番号略>、弁論の全趣旨)。

2  訴外株式会社都市開発(以下「都市開発」という。)は、不動産の販売、仲介を業とする会社であり、第一勧業信用組合目白支店との取引があったことから、同信用組合の紹介により、都市開発が販売(仲介)した不動産の購入者らが控訴人に住宅ローンの融資の申込みをできるようにした(<書証番号略>、弁論の全趣旨)。

3  都市開発からの不動産購入者に対する控訴人の住宅ローン融資は、全部で一八八件実行された。控訴人における住宅ローン実行の手続は、購入者から融資申込書類の提出を受けて審査の上、条件を満たす購入者に対して融資を実行することを決するが、直ちに融資を実行することをせず、当該不動産について住宅ローン債務を担保するための抵当権設定登記手続に必要な書類を徴し、これが揃ったとの委託司法書士からの連絡を受けてから、購入者の指定した第一勧業信用組合目白支店の預金口座に振り込む方法で送金するという方法をとっていた。購入者は、これにより代金を支払って当該不動産について所有権移転登記を経由した上、控訴人のための抵当権設定登記をすることになる(<書証番号略>)。

4  しかし、控訴人は、昭和五八年中に、抵当権設定登記手続に必要な書類を徴していないにもかかわらず、委託司法書士の報告を信じて融資を実行したことがあった。そして、都市開発は、購入者から支払を受けた代金を自社の運転資金に使用してしまったために、都市開発が売買を仲介したり、取り次ぎ売買した不動産の所有者である売主に代金を支払うことができず、その結果、購入者に対する所有移転登記も控訴人のための抵当権設定登記もできないという事態が生じた。そのため、控訴人は、同年一二月限りで都市開発からの不動産購入者からの住宅ローンの申込みを断わっていた。

そこで、都市開発は、昭和五九年二月九日に控訴人との間で、同社が販売又は仲介する不動産の買主が控訴人から住宅ローンの融資を受けるについて、当該不動産について抵当権設定登記がなされるまでの間に限り、その買主のために金一億円(昭和五九年五月一一日に金二億一一〇三万円に変更した。)を限度として連帯保証する旨の包括的保証契約(差し入れた保証書の日付は、昭和五八年一〇月七日とされた。)を締結した。また、補助参加人らは、同日都市開発の依頼により、後記のとおり自社所有の不動産に都市開発の右の連帯保証債務を担保するため、根抵当権を設定した。しかして、控訴人は、購入者の承諾を得て、購入者に予め住宅ローンの融資金の振込先の預金口座の預金払戻請求書を作成してもらい、これを控訴人の融資担当者である伊藤九州男(以下「伊藤」という。)が預かって、前記のような事態を避けることとした上で、住宅ローンの融資を再開することとなった。しかし、そのような方策をとったにもかかわらず、住宅ローンの融資金が不動産所有者である売主に支払われなかった場合もあり、その結果として、現時点において住宅ローンの融資を実行したにもかかわらず、不動産所有者である売主から購入者への所有権移転登記及び控訴人のための抵当権設定登記がなされていない案件は少なくとも九件であり、その住宅ローン融資金の合計額は、金一億八五〇〇万円に達している。被控訴人行方の本件事案もそのうちの一件であり、同被控訴人が購入した後記のマンションについては、売主から同被控訴人に対する所有権移転登記が経由されていない(<書証番号略>)。

5  被控訴人行方は、控訴人に対し、同被控訴人が都市開発から購入する東京都板橋区東山町所在のマンションの購入代金を支払うための資金の融資を申し込み、控訴人は、昭和五九年六月一二日に被控訴人行方に対し、被控訴人向後の連帯保証のもとに、次の約定で金二三五〇万円を貸し付け、その資金は同日中に被控訴人行方が指定した第一勧業信用組合目白支店の同被控訴人名義の普通預金口座(以下「本件預金口座」という。)に振り込まれた(<書証番号略>)。

最終弁済期限 昭和八四年六月二二日

利息 月利 0.765パーセント

遅延損害金 年一四パーセント

返済方法 元利均等割賦返済方式により次のとおり支払う。

① 昭和五九年七月から毎月二二日限り元利金一三万一九九一円ずつ。

② 同年八月から毎年二月と八月の各二二日限り元利金三九万五七三七円ずつ。

過怠約款 被控訴人行方が元利金の返済を一回でも怠ったときは、当然に期限の利益を失う。

6  控訴人の融資担当者である伊藤は、被控訴人から本件預金口座に振り込まれる融資金を払い戻して都市開発への売買代金として支払うために、被控訴人行方から同口座の預金の払戻請求書を預かっていた(当事者間に争いがない。)。

7  被控訴人行方は、昭和五九年七月二二日の第一回の弁済期日に元利金の返済をしなかったことにより、同日期限の利益を失った。

8  被控訴人行方の本件貸金債務(以下「本件主債務」ともいう。)についても、前記4のとおり、被控訴人向後のほかに都市開発も連帯保証をしており、また都市開発の連帯保証債務を担保するために補助参加人ら所有の別紙物件目録記載の各不動産(以下「本件不動産」と総称し、個別的には「本件一不動産」などという。)に根抵当権が設定されていたところ、控訴人は、昭和五九年一〇月二六日に、都市開発に対する右連帯保証債権を請求債権として、本件各不動産につき東京地方裁判所及び千葉地方裁判所佐倉支部に右の根抵当権の実行としての競売の申立てをしたところ、東京地方裁判所は昭和五九年一〇月二九日に本件一ないし四不動産につき(東京地方裁判所昭和五九年(ケ)第二一六五号)、千葉地方裁判所佐倉支部は本件五ないし八不動産につき(千葉地方裁判所佐倉支部昭和五九年(ケ)第二二六号)、それぞれ不動産競売開始決定をし、東京地方裁判所の競売開始決定正本は同年一一月一四日に、千葉地方裁判所佐倉支部の競売開始決定正本は同年一二月二八日にそれぞれ抵当債務者である都市開発に送達された。また、控訴人は、昭和六三年四月二三日に千葉地方裁判所佐倉支部に債権計算書を提出し、その内容に基づいて配当表が作成された上、配当期日の呼出状が都市開発に送達された(当事者間に争いがない。)。

9  被控訴人らは、本件貸金債務は右昭和五九年七月二二日の経過により弁済期限が到来したところ、右請求権の消滅時効の時効期間は商事債務であるため五年であるから本件訴訟の提起時(平成元年一〇月二六日)には消滅時効が完成しているとして、平成二年一月二五日の本件原審の第二回口頭弁論期日において、右時効を援用した(当事者間に争いがない。)。

二争点

1  貸金の交付の有無

被控訴人らは、控訴人の融資担当者である伊藤が被控訴人行方から、本件預金口座に振り込まれた融資金を払い戻すための預金払戻請求書を預かっていたから、本件消費貸借の目的である金銭の同被控訴人への交付がなく、消費貸借契約の要物性を満たしていないと主張して、本件金銭消費貸借契約の成立を否認する。

したがって、第一の争点は、本件貸金が被控訴人行方に交付されたか否か、である。

2  本件貸金返還請求権の消滅時効を援用することの可否

被控訴人らの消滅時効の援用に対し、控訴人は、次のように主張した。

本件各不動産に対する前記の各競売申立事件は競売開始決定に対する何らの異議や不服申立てもなく、競売実施の直前まで手続が進行していた。その段階に至って、補助参加人らは、抵当権実行停止の仮処分命令を得るとともに、昭和六〇年四月九日に控訴人を被告として、本件各不動産について、前記根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(東京地方裁判所昭和六〇年(ワ)第三八七六号。以下、「別件訴訟」という。)。別件訴訟においては、本件主債務及び物上保証の被担保債権である都市開発の連帯保証債務の存在について主張立証が行われ、一段落がついたころに裁判所から和解の勧告があり、補助参加人らも和解の席に着いた。しかし、補助参加人らは、和解の席上、和解に応じるような態度を示しながらも、支払額を明示せず、徒に期日を重ねるのみであった。そして、被控訴人らの主張する消滅時効期間が経過したころに、補助参加人らは態度を急遽硬化させて、控訴人が到底承認しがたい低額の支払額を提示したため和解は打ち切られた。補助参加人らは、その直後に開かれた口頭弁論期日において、主債務である被控訴人行方の本件貸金債務の消滅時効を援用するに至り、被担保債務である都市開発の連帯保証債務も附従性により消滅したとして、これを請求原因に追加した。和解の席では債務の存在を承認し、和解による解決を希望していた補助参加人らの右の行為は、それまでの訴訟行為からは全く予測のできない態度変更であった。補助参加人らの右の消滅時効の援用は、訴訟上の禁反言、信義則違反又は権利の濫用として、許されないというべきである。そして、補助参加人小郷建設は、都市開発が取り扱う中古建物、マンションの内装工事を一手に請け負い、また、都市開発の中古建物の仕入業務の一翼を担っていたものであり、補助参加人らと都市開発は、役員、従業員を共通にしていたので、都市開発と補助参加人らとは実質的に一体である。また、都市開発の紹介により本件事案のように住宅ローンの融資を受けたもののなかには都市開発に名義貸をしていたものもあり、他の住宅ローン主債務者についても名義貸ではないかとの疑いがあり、住宅ローン主債務者は、都市開発、補助参加人らと実質的に一体の関係にあったとみるべきである。被控訴人らも、都市開発とともに、補助参加人らと一体の関係にあるから、被控訴人らも本件訴訟において、本件貸金債務の消滅時効を援用することは許されないという制約に服するべきである。

したがって、第二の争点は、被控訴人らが本件貸金返還請求権の消滅時効を援用することが、禁反言、信義則違反又は権利濫用として許されないか否か、である。

3  時効中断の有無

控訴人は、更に、右の主張が認められないとしても、被控訴人らが主張する消滅時効は中断しているとして、次のとおり主張した。

(1) (差押え)

控訴人は、前記のとおり、本件各土地につき根抵当権の実行としての競売の申立てをし、東京地方裁判所及び千葉地方裁判所佐倉支部は、本件各土地を競売のために差し押さえた。したがって、被控訴人らの連帯保証人である抵当債務者都市開発の本件連帯保証債務の消滅時効は、右の差押えにより、中断した。そして、補助参加人らと都市開発及び被控訴人らは一体の関係にあったから、右の時効中断の効果は、被控訴人らに対しても及ぶものである。

控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成していない。

(2) (裁判上の請求)

更に、控訴人がした右の根抵当権の実行としての競売の申立ては、裁判所の競売手続を通じて継続的に権利行使をするものであるから、時効中断事由である差押えのほかに、抵当債務者都市開発に対する「裁判上の請求」としての効力がある。特に、千葉地方裁判所佐倉支部の競売事件においては、控訴人は、昭和六三年四月二三日に債権計算書を提出し、その内容に基づいて配当表が作成された上、配当期日の呼出状が都市開発に送達されているのである。したがって、右の競売申立事件が係属している間は「裁判上の請求」としての効果が継続しているものというべきである。そして、連帯保証人である都市開発に対する裁判上の請求は、民法四五八条、四三四条により、主債務者である被控訴人行方及び他の連帯保証人である被控訴人向後に対しても効力を生ずるから、昭和五九年一〇月二九日の本件競売の申立てにより消滅時効は中断しており、控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成していない。

(3) (裁判上の請求に準ずる応訴)

補助参加人らは、前記のとおり、控訴人を被告として、本件不動産について、前記根抵当権設定登記の抹消手続を求める別件訴訟を東京地方裁判所に提起した。控訴人は、直ちに応訴して請求棄却を求めるとともに、被控訴人行方の本件主債務、都市開発の本件連帯保証債務及び補助参加人らの本件物上保証債務の存在を主張、立証した。したがって、別件訴訟における控訴人の右の主張には裁判上の請求に準ずる効力があり、この効力は、補助参加人らと一体の関係にある被控訴人ら及び都市開発に対しても及ぶから、消滅時効は中断した。そして、控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成していない。

(4) (裁判上の催告)

控訴人の前記(1)の根抵当権の実行としての本件競売の申立ては、裁判所の競売手続を通じて継続的に権利行使をするものであるから、被控訴人らの連帯保証人である抵当債務者都市開発に対する「裁判上の催告」としての効力がある。特に、千葉地方裁判所佐倉支部の競売事件においては、控訴人は、昭和六三年四月二三日に債権計算書を提出し、その内容に基づいて配当表が作成された上、配当期日の呼出状が都市開発に送達されているのである。したがって、右の競売申立事件が係属している間は「裁判上の催告」としての効果が継続しているものというべきである。また、控訴人の前記(3)の別件訴訟に対する応訴も「裁判上の催告」としての効力があり、別件訴訟が係属している間はその効果が継続しているものというべきである。そして、民法四五八条、四三四条により、又は補助参加人ら、都市開発及び被控訴人らが一体の関係にあることにより、都市開発に対する催告は、被控訴人らに対しても効力を生ずるから、本件競売の申立て又は別件訴訟に対する応訴により消滅時効は中断しており、控訴人は、右時効中断中の平成元年一〇月二六日に本件訴訟を提起しているので、消滅時効は完成していない。

(5) (債務の承認)

補助参加人らは、別件訴訟の第一審の和解期日において、当初は、支払額を明示はしなかったが、和解に応じる態度を示し、被控訴人らの主張する消滅時効期間が経過した後には、極めて低い金額ではあったが、支払額を明らかにして、和解案を提示した。補助参加人らの右の和解案は、物上保証の本件被担保債権の存在を認め、それについて支払の猶予を求めるとともに、その一部を支払って、その余の債務を免れようとする意思の表示であるから、時効の中断事由である債務の承認に当たる。そして、被控訴人ら及び都市開発が補助参加人らと一体の関係にあることは前記のとおりであるから、右の債務の承認による時効中断の効果は、被控訴人らにも及ぶものというべきである。

したがって、第三の争点は、時効中断の有無である。

4  控訴人の被控訴人行方に対する不法行為の成否及び右不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺の成否

被控訴人らは、次のように主張した。

控訴人の融資担当者である伊藤は、本件預金口座に振り込まれた融資金を払い戻すための払戻請求書を被控訴人行方から預かった上、都市開発と共謀して、右払戻請求書により右預金口座に振り込まれた融資金を恣に払い戻して他の目的に使用した。そのため、同被控訴人は、売買の目的となったマンションの所有権を取得することができず、その売買代金相当の金二九五〇万円の損害を被った。これは同被控訴人に対する背任であり不法行為を構成するから、控訴人は、同被控訴人に対し、民法七〇九条、七一五条に基づき右損害の賠償をする義務がある。そこで、同被控訴人は、控訴人に対し、原審の第二回口頭弁論期日(補助参加人らは第一回口頭弁論期日)において、右の金二九五〇万円の損害賠償請求権を自働債権として、本訴請求金と対当額で相殺する旨の意思表示をした。

したがって、第四の争点は、右主張の不法行為の成否及び相殺の成否である。

第三争点に対する判断

一争点1(貸金の交付の有無)

<書証番号略>によると、控訴人の融資担当者である伊藤は、被控訴人行方から本件預金口座に振り込まれる住宅ローンの融資金を払い戻すための払戻請求書を預かる際に、同被控訴人に対し、払い戻した融資金を同被控訴人が購入したマンションの代金として売主である都市開発に支払う趣旨であることを説明し、同被控訴人もこれを了解して右払戻請求書を預けたことが認められる。したがって、被控訴人行方が伊藤に右の払戻請求書を預けたのは、同被控訴人の意思に基づくものであり、本件融資金の本来の目的に使用するためであったものと認められる。また、被控訴人行方が右の払戻請求書を伊藤に預けても、同被控訴人は本件預金口座に振り込まれた融資金の払戻しを受ける権利を失うわけではなく、同被控訴人の預金に対する支配は失われないから、本件預金口座への控訴人からの前記貸金の振込の方法による送金があった以上、右の払戻請求書を伊藤に預けたことをもって、同被控訴人に対する本件貸金の交付がなかったものということはできないから、本件貸金は、本件預金口座に振り込まれた時点において、被控訴人行方に対する交付がなされたものというべきである。(仮に、被控訴人行方が、右融資金を都市開発の営業資金に流用されることを承知しており、実質的に住宅ローン融資を受ける名義貸をしていたのに等しいとしても、右の関係は、被控訴人行方が控訴人より融資を受けた金員を都市開発に更に転貸した法律関係になるだけにすぎないものというべきである。)

したがって、この点に関する被控訴人らの主張は、理由がない。

二争点2(本件貸金返還請求権の消滅時効を援用することの可否)

1 前記事案の概要中「一争いのない事実と証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実」に、<書証番号略>及び弁論の全趣旨を併せると次の各事実が認められる。

(一) 控訴人は、保証義務、住宅ローン融資などの金融を主たる目的とする会社であり、都市開発といわゆる住宅ローン斡旋の提携を結んでいた。補助参加人らは、都市開発からの不動産購入者の控訴人に対する金銭消費貸借契約に基づく貸金(住宅ローン)債務を連帯保証した都市開発の連帯保証債務を物上保証することを承諾して、補助参加人東京企画は本件一、二不動産につき、補助参加人小郷建設は本件三ないし八不動産につき、右の連帯保証債務を被担保債権(極度額一億一〇〇〇万円)として、控訴人のために根抵当権を設定した。

(二) 控訴人は、昭和五九年一〇月二六日に、都市開発に対する被控訴人行方を含む不動産購入者九名分の連帯保証債務の履行請求権(利息及び遅延損害金を含む。)のうち一億一〇〇〇万円を請求債権として右の根抵当権に基づき、前記第二の一の8のとおり競売の申立てをし、その競売手続が経由した。

(三) 右の各競売開始決定に対しては、異議や不服の申立てがないまま手続が進行した。

特に、千葉地方裁判所佐倉支部の事件については、売却許可決定(売却代金一〇〇六万五〇〇〇円)を経て、昭和六三年三月二四日には代金の納付もなされ、執行裁判所は、配当期日を同年五月一六日午後一時三〇分と指定し、控訴人に対して配当期日呼出状と計算書提出の催告書を送達した。そして、控訴人は、昭和六三年四月二三日に債権計算書を同裁判所に提出した。右債権計算書により、被控訴人行方に対する本件貸金債権については、元本金二三五〇万円、利息金二四万二三二六円、損害金一二五六万一七二一円と届出がなされた。右の配当期日においては、右競売事件の所有者である補助参加人小郷建設から異議があったが完結しなかったため、同補助参加人から所定期間内に配当異議の訴えが提起され、右訴訟が千葉地方裁判所佐倉支部に継続している。

(四) 補助参加人らは、昭和六〇年四月九日に控訴人を被告として本件各不動産について、前記根抵当権設定登記の抹消登記手続を求める別件訴訟を東京地方裁判所に提起した。

(五) 別件訴訟については、平成二年三月二八日に第一審の判決言い渡しがあり、控訴人主張の補助参加人らの消滅時効の援用に関する主張が判決上摘示されており、右の判決は、この消滅時効の援用により、被控訴人行方の本件主債務は消滅しており、前記根抵当権の被担保債権である控訴人の都市開発に対する連帯保証債権は、保証債務の附従性により消滅したから、右根抵当権も消滅したとの理由で、補助参加人らの請求を認容するものであった。

(六) 別件訴訟の右第一審の判決には、補助参加人らの右の消滅時効の援用が禁反言、信義則違反又は権利の濫用として許されない旨の主張は摘示されていない(控訴人らは、右第一審においては、その主張をしなかったものと推認される。)。

(七) 補助参加人小郷建設は、都市開発が販売する中古マンション、建物の内装、修理工事を請け負っている業者であり、その代表取締役小郷利夫は、都市開発の事業を支援するいわゆるスポンサーとなっており、都市開発の役員を兼務していたこともあった。補助参加人東京企画は小郷利夫の妻小郷栄子が代表取締役となっているが、小郷利夫が実質的にその経営を支配していた。被控訴人行方は都市開発からマンションを購入した者であり、被控訴人向後は被控訴人行方の依頼によつて控訴人に対し連帯保証した者であり、被控訴人らは都市開発と補助参加人らとは、右のマンション購入に係わる関係以外に取引上、経済上の関係を有しない。

(八) 別件訴訟の第一審において、和解の勧試があり、補助参加人らも和解手続に応じていたが、和解金額の提示をなかなか明らかにせず、期日を重ねた後に低額の支払額を提案した。そのため、控訴人が納得するに至らず、和解手続は打ち切られた。補助参加人らは、右和解手続打ち切りの後の口頭弁論期日において、主債務者である被控訴人行方の本件主債務につき消滅時効を援用をする旨の主張をした。

控訴人は、補助参加人らは別件訴訟の和解の席上で和解に応じるような態度を示しながら、徒に期日を重ねて時間を稼ぎ、消滅時効期間が経過したころに態度を急遽硬化させて、控訴人が到底承服しがたい低額の支払額を提示して和解を打ち切らせ、右消滅時効を援用するに至った旨主張するが、補助参加人らが本件主債務金額相当の支払義務ないし責任を認めるような言動をして控訴人を油断させ、詐術的に右和解手続を利用したことを認めるに足りる証拠はない。まして、被控訴人らが、本件主債務の支払義務を認めるような言動をして、右の詐術的な和解手続の利用をしたことを認め得る証拠はない。また、控訴人は、被控訴人らが、都市開発ともに、補助参加人らと一体の関係にある旨主張するが、補助参加人らと都市開発が取引上協力関係にあることは認め得るも、被控訴人らは都市開発と取引上対向する関係にあるのみであり、被控訴人行方がローン債務の分割払金の第一回分から支払っていないことから、被控訴人行方が都市開発に名義貸ないし融資金の都市開発への転貸をしていたのではないかとの疑いも生じないわけではないが、被控訴人らが都市開発に住宅ローン融資を受ける名義貸ないし融資金の転貸をしていたことを認めるに足りる確たる証拠はなく、他に被控訴人らが都市開発や補助参加人らと取引上もしくは経済上一体とみるべき事情を認めるに足りる証拠はない。

2  そして、右に認定した事実を総合しても、被控訴人らの本件訴訟における前記の消滅時効の援用が禁反言の原則に反し、又は信義則に違反するものと認めるに足りない。

更に、右認定の事実によると、控訴人は金融を主たる目的とする会社であるから、債権管理のための組織を有し、かつ、債権管理に精通した人員を配置しているものと推認されるところ、そのような控訴人であれば、本件消費貸借契約に基づく被控訴人行方に対する貸金債権及び被控訴人向後に対する連帯保証債権の消滅時効期間が前記期限の利益喪失の日から五年間であること、右の各債権の消滅時効の完成を阻止するためには、主債務者である被控訴人行方又は連帯保証人である被控訴人向後に対して直接本件訴訟のような給付訴訟を提起すれば足りることは容易に知り得るものと考えられること、したがって控訴人としては、本件不動産に対する競売の申立てはしたものの、補助参加人らから別件訴訟を提起されているのであるから、本件各債権の保全については格別の注意を払って万全を期するのが債権管理上当然であるにもかかわらず、控訴人は、右の基本的な注意を怠り、右の期限の利益喪失の日から五年を経過した後に本件訴訟を提起するまでは、直接主債務者である被控訴人行方又は連帯保証人である被控訴人向後に対する時効中断の措置を取らないままに推移していたのである。控訴人としては、僅かの注意を払いさえすれば、本件各債権の消滅時効が完成することを防止し得たものといわざるを得ないのである。控訴人の側にこれらの事情の認められる本件においては、前記認定の各事実を総合しても、被控訴人らの本件訴訟における前記消滅時効の援用が権利の濫用に当たるものと認めるには足りない。

したがって、争点2に関する控訴人の主張は、理由がない。

三争点3の(1)(差押えによる時効中断の有無)

1 根抵当権実行のためにする民事執行法による競売は、被担保債権に基づく強力な権利実行手段であるから、時効中断の事由として差押えと同等の効力を有するというべきである。そして、差押えによる時効中断の効果は、原則として中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶものである(民法一四八条)が、他人の債務のために自己所有の不動産につき根抵当権を設定した物上保証人に対する競売の申立ては、被担保債権の満足のための強力な権利実行行為であり、時効中断の効果を生ずべき事由としては、債務者本人に対する差押えと対比して、差異を設けるべき実質的な理由はない。民法一五五条は、右のような場合について、同法一四八条の右の原則を修正し、時効中断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を受ける者にも及ぶことを定めるとともに、これにより右のような時効の利益を受ける者が中断行為により不測の不利益を被ることのないように、その者に対する通知を要することとして、債権者と債務者との間の利益の調和を図っているのである。したがって、債権者から物上保証人に対し、担保権の実行としての競売の申立てがなされ、執行裁判所がその競売開始決定をした上、競売開始決定正本を当該債務者に送達した場合には、債務者は、民法一五五条により、当該被担保債権の消滅時効の中断の効果を受けるものと解すべきである(最高裁判所昭和五〇年一一月二一日第三小法廷判決・民集二九巻一〇号一五三七頁参照)。そうすると、本件においては、補助参加人ら所有の本件各不動産に対する競売開始決定正本が被担保債権の債務者である都市開発に送達されたことにより、都市開発の控訴人に対する連帯保証債務について消滅時効が中断されたということができる。

2  しかしながら、連帯保証人について生じた時効中断事由のうち、主債務者に対しても中断の効力を有するのは、連帯保証人に対する履行の請求の場合(民法四五八条、四三四条)に限られるのであって、本件において都市開発に生じた消滅時効の中断事由は、右のとおり民法一四七条二号の差押えであり、これに当たらないことは明らかであるから右の中断事由は主債務者である被控訴人行方に効力を及ぼさないといわなければならない。そして、被控訴人行方の連帯保証人である都市開発に生じた時効中断の効力が他の連帯保証人である被控訴人向後に対して、直接効力を及ぼすものでないことも明らかである。

なお、控訴人は、補助参加人らと都市開発及び被控訴人らは一体の関係にあったから、右の時効中断の効果は、被控訴人らに対しても及ぶものであると主張するが、補助参加人らと都市開発及び被控訴人らは一体の関係にあったとの主張事実を認めるに足りる証拠がないことは先に説示したとおりであるから、右主張は、理由がない。その他、本件に現れたすべての事情を併せても、補助参加人ら及び都市開発に生じた右の時効中断の効力が被控訴人らに及ぶものと解すべき事情を認めることはできない。

四争点3の(2)(裁判上の請求による時効中断の有無)

1  控訴人は、前記根抵当権の実行としての競売の申立ては、裁判所の競売手続を通じて継続的に権利行使をするものであるから、時効中断事由である差押えのほかに、抵当債務者都市開発に対する「裁判上の請求」としての効力があり、右の競売申立事件が係属している間はその効果が継続しているものというべきところ、連帯保証人である都市開発に対する裁判上の請求は、民法四五八条、四三四条により主債務者である被控訴人行方及び他の連帯保証人である被控訴人向後に対しても効力を生ずると主張する。しかしながら、前説示のとおり、根抵当権実行のためにする民事執行法による競売は、時効中断の事由として差押えと同等の効力を有するというべきであるが、差押えは、債権者が債権の弁済を得るために行う権利実行行為であり、債務者に対する意思表示の方法ではないから、債務者に対する履行を受けることを欲することの意思表示である「請求」と同一視することはできない。このことは、民法一四七条が「請求」と「差押え、仮差押え又は仮処分」とを明確に区別していることからも明らかである(大審院大正三年一〇月一九日第二民事部判決、民録二〇輯七七七頁参照)。競売の申立てが債務者自身の財産に対して行われるのではなく、自己の財産をもって他人の債務の担保に供した物上保証人の財産に対して行われる場合についてこれを検討してみると、物上保証人は何らの「債務」を負担するものではないから、債権者に対して給付すべき義務を負わず、単に担保権の実行を受忍すべき義務を負うにすぎない。したがって、自己の不動産に債務者のために根抵当権を設定した物上保証人の不動産に対する競売の申立ては、物上保証人に対して「債務」の履行を請求するものではあり得ない。また、物上保証人の不動産に対する競売の申立ては、担保に供された抵当不動産の換価により、債権の満足を図ろうとする権利実行行為であるから、競売開始決定が債務者に送達すべきものとされている(民事執行法一八八条、四六条一項。なお、物上保証人の不動産に対する競売開始決定の場合においては、四六条一項所定の「債務者」は、「所有者及び債務者」と読み換えるべきである。)ことを考慮に容れても、これを債務者に対して債務の履行を求める意思表示である「請求」と解し、又は債務者に対する「請求」の意思表示を含むものと解する余地はないというべきである。なお、民事執行法は、担保権の実行としての競売について、債務者を所有者とともに競売の申立人の「相手方」としていると解される(同法一八一条四項、一八二条、一八九条、一九一条、一九六条)が、これは、担保権実行の手続によって債務者の負う債務の消長を来たし、それ故に債務者が担保権の不存在又は消滅を理由として競売開始決定に対し執行異議の申立てをすることができる道を与える目的に出たものにほかならないのであって、これをもって、物上保証人の不動産に対する担保権の実行としての競売の手続が債務者に向けられた債務の履行を求める「請求」の手続又は「請求」を含む手続であるということはできない。

これを本件についてみるに、控訴人は、物上保証人である補助参加人ら所有の本件各不動産に対して、根抵当権の実行として競売の申立てをし、その競売手続が進行していたにすぎないのであるから、これをもって、債務者である都市開発に対する裁判上の請求としての効力があるとすることはできない。

2  また、前記認定事実によると、控訴人は、千葉地方裁判所佐倉支部に係属している競売事件において、昭和六三年四月二三日に被控訴人行方に対する本件貸金債権を元本金二三五〇万円、利息金二四万二三二六円、損害金一二五六万一七二一円とする債権計算書を同裁判所に提出していることが認められる。しかし、債権の届出は、執行裁判所に対して不動産の権利関係又は売却の可否に関する資料を提供することを目的とするものであって、届出に係る債権の確定を求めるものではないから、不動産競売事件において債権を主張して、その確定を求め、又は債務の履行を求める請求であると解することはできない(最高裁判所平成元年一〇月一三日第二小法廷判決、民集四三巻九号一頁参照)。

3  その他、前記競売の申立て及び各競売事件において行われた各手続が、補助参加人らと都市開発とが取引上協力関係にあることを考慮に容れても、都市開発に対して時効中断の効力のある「請求」に当たるものと認めることはできない。控訴人の前記主張は、理由がない。

五争点3の(3)(裁判上の請求に準ずる応訴による時効中断の有無)

控訴人は、補助参加人らが提起した別件訴訟において請求棄却を求めるとともに、被控訴人行方の本件主債務及び都市開発の本件連帯保証債務の存在を主張したから、別件訴訟における控訴人の右の主張には裁判上の請求に準ずる効力があると主張する。しかし、補助参加人らは単なる物上保証人であって、債務を負担するものではないから、このような補助参加人らに対する債務の履行の請求ということはあり得ない。また、別件訴訟における控訴人の右の主張は、前記根抵当権が有効に存在することを主張する前提として、その被担保債権の存在を明らかにするためにのみするものにすぎず、控訴人が直接被担保債権の債務者である都市開発に対して被担保債権の存在を主張するものではない。したがって、別件訴訟における控訴人の本件被担保債権の存在に関する主張は、裁判上の請求に準ずる応訴として、都市開発又は被控訴人らに対して時効中断の効果を生ずるものと解することはできない。その他、別件訴訟における控訴人の本件被担保債権の存在に関する主張が被控訴人らの本件主債務の消滅時効を中断させるものと解すべき事情は認められない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の右の主張は、理由がない。

六争点3の(4)(裁判上の催告による時効中断の有無)

1 控訴人は、控訴人の根抵当権の実行としての本件競売の申立ては、裁判所の競売手続を通じて継続的に権利行使をするものであるから、被控訴人行方の連帯保証人である抵当債務者都市開発に対する「裁判上の催告」としての効力があると主張する。しかしながら、根抵当権実行のためにする民事執行法による競売は、時効中断の事由として差押えと同等の効力を有するというべきであるが、差押えは、債権者が債権の弁済を得るために行う権利実行行為であり、債務者に対する意思表示の方法ではないから、「催告」と同一視することはできない。しかも、物上保証人である補助参加人らは何らの「債務」を負担するものではない(補助参加人らと都市開発と被控訴人らとが一体の関係であるとの控訴人の主張が理由のないことは、既に説示したとおりである。)から、控訴人に対して給付すべき義務を負わず、単に担保権の実行を受忍すべき義務を負うにすぎない。したがって、控訴人のした本件競売の申立てが補助参加人らに対して「債務」の履行を催告するものではあり得ない。そしてまた、本件各競売手続が債務者である都市開発に対して向けられた手続でないことは、前記第三の四の1において説示したところから明らかであるから、本件競売の申立てが都市開発に対する「催告」としての効力を有するということもできない。更に、控訴人が千葉地方裁判所佐倉支部にした債権の届出は、執行裁判所に対して不動産の権利関係又は売却の可否に関する資料を提供することを目的とするものにすぎないから、これをもって、補助参加人らあるいは都市開発に対する「催告」と解する余地もない。

その他、本件競売の申立て及び各競売事件において行われた各手続をもって、都市開発に対して時効中断の効力のある「催告」にあたるものと解すべき事情を認めることはできない。控訴人の前記主張は、理由がない。

2  控訴人は、前記別件訴訟に対する応訴も「裁判上の催告」としての効力があり、別件訴訟が係属している間はその効果が継続しているものというべきであるとも主張する。しかし、補助参加人らは単なる物上保証人であって、債務を負担するものではないから、このような補助参加人らに対して債務の履行を催告するということはあり得ない。また、別件訴訟における控訴人の被担保債権の存在に関する主張は、本件根抵当権が有効に存在することを主張する前提として、その被担保債権の存在を明らかにするためにのみするものにすぎず、控訴人が直接被担保債権の債務者である都市開発に対して被担保債権の存在を主張するものではない。したがって、別件訴訟における控訴人の本件被担保債権の存在に関する主張は、裁判上の催告(に準ずる応訴)として、都市開発又は被控訴人らに対して時効中断の効果を生ずるものと解することはできない。その他、別件訴訟における控訴人の本件被担保債権の存在に関する主張をもって、都市開発又は被控訴人らに対して時効中断の効力のある「催告」に当たるものと解すべき事情を認めることはできない。控訴人の前記主張は、理由がない。

七争点3の(5)(債務の承認による時効中断の有無)

前記第三の二の(8)で述べたとおり、別件訴訟の第一審の和解期日において、補助参加人らが、当初は支払額を明示はしなかったが、和解に応じる態度を示し、最終的に極めて低い金額の支払額を示して、和解案を提示したとの主張事実を認めることができるが、補助参加人らが本件主債務の存在を一応認めた上で和解手続に応じていたこと、並びに補助参加人らと被控訴人らが法律上一体と同視すべき事情を認めるに足りる証拠はない。その他、本件請求にかかる各債権について、その消滅時効の中断事由としての「承認」がなされたものと認めるべき事情を認めるに足りる証拠はない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の前記主張は、理由がない。

八そうすると、控訴人が本件訴訟を提起したのは、被控訴人らが本訴において援用した本件貸金債権及び連帯保証債権の消滅時効期間が経過した後であることは前記認定事実及び本件記録上明らかであるから、右各債権は時効の援用により消滅しているものといわざをえない。

第四結論

以上の認定及び判断の結果によると、控訴人の本件請求は、争点4(控訴人の被控訴人行方に対する不法行為の成否及び右不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺の成否)について判断を加えるまでもなく、いずれも理由がないから、これを棄却すべきである。よって、当裁判所の右の判断と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官鬼頭季郎 裁判官渡邉等 裁判官富田善範)

別紙物件目録

(一及び二の所有者は補助参加人東京企画、三ないし八の所有者は同小郷建設。)

一 東京都杉並区上井草一丁目一九〇番五

宅地 44.79平方メートル

(持分 五分の一)

二 (一棟の建物の表示)

東京都杉並区上井草一丁目一九〇番地五

鉄骨一部鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付四階建

床面積 一階 87.70平方メートル

二階ないし四階 各32.08メートル

地下一階 31.23平方メートル

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 上井草一丁目一九〇番五の五

鉄筋コンクリート造一階建 店舗

床面積 地下一階部分 25.10平方メートル

三 東京都板橋区赤塚四丁目一二九一番一

山林 二一九平方メートル

四 東京都新宿区弁天町一五五番地三

家屋番号 一五五番三

鉄筋コンクリート造陸屋根二階建居宅・倉庫

床面積 一階 132.90平方メートル

二階 111.78平方メートル

五 千葉県印旛郡富里村中沢字松原三二二番一〇

宅地 63.54平方メートル

六 千葉県印旛郡富里村中沢字松原三二二番二八

宅地 99.87平方メートル

七 千葉県印旛郡富里村中沢字松原三二二番一一

公衆用道路 四四平方メートル

八 千葉県印旛郡富里村中沢字松原三二二番一〇、同番地二八、

家屋番号 三二二番二八

木造瓦葺二階建 居宅

床面積 一階 45.54平方メートル

二階 33.95平方メートル

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